97年4月施行された容器包装リサイクル法は、自治体が資源ごみ回収し、分別し、保管した資源について、自治体から引き取り、再商品化することをメーカーに義務づけたものです。自治体が回収―分別―保管しないものについての引き取り義務はありません。さらに、自治体が再資源業者に有償で売ることができる資源ごみは、その時点で「商品化された」ため、メーカーの再商品化義務から除外されます。アルミ缶、スチール缶、紙パックなどが、それに該当します。
 お金を付けないと引き取られない「逆有償」であり、メーカーの再商品化の義務対象となったのが、PETボトルとガラスびんです。容器メーカー及び中身メーカーは、(財)日本容器包装リサイクル協会と契約し、それらごみ資源の再商品化義務を果すことになります。協会は、メーカーから集めた契約金で、再資源化業者(PETやびんの再生業者)と契約し、自治体からそれらを引き取らせます。
 メーカーが協会と契約する金額は、PETボトル1本当りで、中身メーカーが1.4円、容器メーカーで0.3円、ガラスビンでは、中身メーカーが0.4円、容器メーカーが0.03円と、極わずかな金額です。しかしリサイクルで一番費用がかかるのは収集運搬、分別、保管です。例えば名古屋市のリサイクル分別収集コストは、500mlガラスびん1本当たりで計算すると20.8円です。この金額と、メーカーの負担額との差は実に52倍にもなります。あまりにも自治体の負担が重く、メーカーの負担が軽いことがわかります。メーカーは、こんな僅かな金額でリサイクル義務を果したとされるのですから、負担の大きいメーカーの自主回収や、リターナブル容器を選択するインセンティブとなっていません。500mlの小型PETボトルの爆発的な増加が、その代表的な事例といえます。

   リサイクル費用の7割が収集・分別・保管費用といわれています。今後PETボトルやその他プラスチック、その他紙、生ごみなどのリサイクルを進めようとすれば、するほど、自治体のコストは増加し、財政を圧迫します。このままではリユースの普及どころか、リサイクルの取組みも前進しません。
   リサイクルのメーカーの負担は、3割に過ぎません。これでは真剣に、ごみ量を発生源(製造段階)で減らす努力や、リターナブルを採用する動機付けになりません。消費者にとっても、リサイクル費用は税金であるため、リターナブル容器を購入して減量に努めても、家計支出を減らすことにならず、ごみ減量の動機付けになりません。
   リターナブル容器が、使い捨てのワンウエイ容器より、高くなってしまっている現状では、消費者は、環境を考えて実践したいと考えても、価格の点から、敬遠されて売れなくなります。売れなければメーカーも製造しなくなります。
   リサイクルのワンウェイ容器は、自治体がその7割を負担しています。しかしリターナブル製品は全てメーカーの自己責任でリユースしているので、10割負担です。これでは、リターナブル容器を採用しようとするメーカーは、なくなります。
   そもそも、「分別の仕方がわかりにくい」ことが大きな問題です。分別する市民には、「同じ材質なのに、なぜ使い捨て商品(ラップ等)は対象外なのか、なぜサービス品(クリーニングの袋等)は対象外なのか、理解できません。このため、大都市の多くでは「消費者の協力が得られない」として、分別収集の実施に二の足を踏んでいます。
 リサイクルには異物混入が厳禁ですから多くの消費者の協力が不可欠です。一刻も早く「素材別リサイクル」の仕組みを構築し、わかりやすい分別方法を実現するべきです。
   法の制定以前は、「小型PETボトル」の販売を業界が自主的に控えていましたが、95年の容リ法公布後「リサイクルされるから問題ない」と言わんばかりに、96年4月、自主規制が廃止されてしまいました。このためアッという間に小型PETボトル販売が急拡大し、アッという間に回収されないPETボトルごみも急増してしまいました。
   法では、『再商品化費用を製品価格に円滑かつ適正に転嫁させる』ため、法の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知徹底を図ることが国の義務とされています。
 ところが、国の広報努力は皆無であり、市町村は分別収集への協力を呼びかけるに留まります。しかも、容リ法による分別収集を実施する市町村が少ない(集められた容器包装の量が少ない)ことなどから、製品の1単位あたりの再商品化費用はわずか1円程度であるのが実態です。これでは、現在の市況からいっても事業者は再商品化費用を製品価格に上乗せすることはできず、事業者の不満も高まるばかりです。
 つまり、容器包装リサイクル法を実施すると、「市町村は過酷な財政負担で悲鳴をあげ」、「消費者は分別の鬼とならざるを得ず」、「事業者は真綿で首を締められる」という状態なのです。このような悪法を改正しないのは、明らかに国の責務違反といえます。

 容器包装リサイクル法の問題は、まだまだあります。例えば、フリーライダー問題(再商品化義務の不履行)、自主回収認定の硬直的な運用(おおむね90%と高すぎる認定率)など、一日も早い是正が求められています。

 こうした容器包装リサイクル法の問題点は、リサイクルを税金で処理していることから発生しています。税金ではなく、リサイクル費用を、EPR(拡大生産者責任)を基本として製品価格に上乗せするように、軌道修正をする必要があります。

top | 容リ法、ここが間違っている容リ法見直しの三つのポイント容リ法はこう変えたい自治体廃棄物ワークシート研究会について