市民と議員の条例づくり交流会議

第4分科会「コミュニティ活動と議会」

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報告「横浜市における住民基本台帳の駆け込み大量閲覧防止条例の市民立法運動に立ちはだかる壁」

◆竹中麻美(コミュニティネット横浜)
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 神奈川ネットでは、昨年、住民基本台帳の閲覧を制限するための条例制定に向けた運動を行った。個人情報保護法が制定されているにもかかわらず、私たちが生活している中で、さまざまなDMが届いている。また、高齢者に対しては詐欺事件につながるような話にも発展し、市民生活において身近な問題だ。総務省でも見直しの動きがあったが、改正の動きを前に、大量に閲覧されることがないように活動を始めた。

 住民基本台帳の閲覧は、商業目的の閲覧が多く、各区役所で調査をした結果、区役所によって閲覧のされ方が違うこと、閲覧者の後追いが出来ない状況であること・また、情報公開制度をつかい、閲覧における申請書の開示を求めたところ、未成年対象の閲覧が7〜8割だったことが分かった。横浜市では、件数としては年間8万件、一件で200、300と、本当に大量の閲覧が行なわれていた。

 どのように条例提案するかということで、まずは直接請求を考えた。しかし横浜市の人口は330万人、直接請求するには、有権者の1/50にあたる5万8千人の直筆の署名が必要。首長提案は1/1、議員提案でも1/12(議員8名)、市民が条例提案をするには横浜市は規模が大きすぎることを実感した。

 そこで条例の制定を求める請願に切り替えた。横浜市の市民団体に声をかけ、昨年の9月議会に請願を提出、常任委員会でも本会議でも請願は採択されたが、付帯意見がついた。内容は、請願者の趣旨に沿い、条例化と同様の効果をもたらす運用についても検討・実施すべきこと、というもの。この付帯意見は、市長が条例制定の意思はないと発言しており、法律を超える条例を作ってはならないという考えが示されていたので、それへの配慮かと思われる。市民局からは条例案を作るためにはパブリックコメントをしなければならず、時間がかかり制定は来年になってしまうとも言われた。

 その後、条例を作る動きがないまま、11月に「転記の禁止、閲覧のみ可」という要綱ができた。これは、同じ内容のものを市川市では条例にしている。条例はできないが、職員が作る要綱であればなんでも出来るのかということが見えてきた。要綱はあくまで行政内部の基準。市民にとって必要なルールは、行政が勝手にコントロールできるものではなく、市民と議会の力で条例化していくものだと考えている。市民立法の運動は、市民の生活の中の課題を解決するために、市民の力でつくっていくべきものだが、それを妨げていたのは、職員がなんでも要綱で解決しようとする横浜市の要綱行政であった。

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