市民と議員の条例づくり交流会議

第2分科会「再検証・都市計画における議会の役割」

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「都市計画における議会の役割の再考」
饗庭伸(首都大学東京)
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 今日の主旨説明と問題提起をかねて最初の報告をしたい。私はこの条例づくり交流会議に関わって今年で3年目になる。最初の年、2004年の会議で都市計画の分科会を持ち、参加者からアンケートを取るなどした。その時は、議会と都市計画とは余り関係がないらしいという感想を持ち、しばらくこのテーマから遠ざかっていた。それを今年はもう一度考え直してみようということでこの分科会になっている。ちょうど今日午前中、廣瀬先生の講演で「議会もいろいろできるはずだ」という問題提起もあった。

 いま述べた2年前のアンケートを少し振り返ってみると、参加者に「都市計画に問題があると感じたことがあるか」との質問への答えは、25人中15人が「大いに問題がある」、9人が「問題がある」で、参加者はかなり意識の高い層だったことが分かる。一方、「誰に『力』が不足しているか」という質問への答えで「議員や議会」を選んだ人は28人中3人で、要するに「議会に力がない」と思っている人は非常に少なかった。他の質問への答えをまとめても、「議会はあまり関与できない」という意識が強いことが分かった。

 そこで、今日の議論を行うに当たっては、次の3点を特に前提としたい。一点目は既成概念を疑ってみる、「できない」と思っていることを疑ってみること。地方分権の流れで「こっそり出来るようになった」こともあるかもしれない。二点目は、この会場でご参加の皆さんの中の「少数意見」をきちんと議論したい。既成概念を疑う時は少数意見を大事にすることが大事であるし、議会の役割である「民主的な議論」も、その本質は少数意見をきちんと吟味して決めることだと思う。三点目は「限定的(法定)都市計画」を対象に考えること。普通の市民から見ると都市計画が街のあり方を何でも決めているかのように思われがちだが、法的な制度である都市計画はやはり社会の一部でしかなく、その意味で実は「限定的」なものであり、それに対して議会がいかに関与できるかという点を議論したい。

 三点目の「限定的都市計画」の意味を、マンション開発を例に説明しておく。マンションを建てたいと思う業者は、地域での都市計画のあり方を見ながらどこに建てるべきか企画し、適当と判断した場所の土地を購入する。それから設計に入るが、この時点ではまだマンション計画は表に出ない。設計がほぼ終わった段階で初めて計画が明らかになる。その時に住民から問題にされても、もう業者にとって予算の使い方は全部決まっているから計画の変更はできない。また住民が問題を議会に持ち込んでも議会では対応できない。さらに、頭のよい業者の場合、例えば8階建てのマンションを建てたいと考える場合、計画は10階建てで公表したりする。それで住民から反対があると「では階数を削って8階建てにしましょう」と、住民の声を一部取り入れたような格好にして、実は本当の計画どおりに造ってしまう。

(図1)

 では都市計画の側はどうしたら良いのか。二つの戦略があり、一つは「予防」、もう一つは「対症療法」。前者は、問題が起きないように都市計画をちゃんと作っておくこと。マンション業者も、都市計画のためにマンションを建てられない場所だと分かっていれば初めから土地を買わない。そういうしっかりした都市計画を作ることにいかに議会が関与するかという問題になる。後者は、土地利用の調整、事業の実行のプロセスの監視などをしっかり行なうことにいかに議会が関与するかで、次に報告がある葉山町のまちづくり条例も一つのあり方。この二つの戦略両方が必要だと思う。

 最後に、現状はどうなっているかの共通認識をつくるために、制度上、議会が都市計画のどれくらい関与できるかを確認したい。自治体の都市計画の一番最初にマスタープランの策定がある。これには行政部局が中心になって市民参加は多く行われるが、神奈川県の真鶴町などごく一部を除き、ほとんどの自治体において議会の議決事項ではなく、議会への説明で済んでしまう。議会において内容に関する審議はまず行なわれていない。その次に、都市計画を立案する過程で民間からの提案を受け入れる制度も新しく導入されたが、まだ実践例は少ない。その後、立案された都市計画について当局が公聴会を開催したり案の縦覧を行なうが、この間、基本的に議会は関与しない。それから案が都市計画審議会(都計審)にかかる。ここには議員も委員として入っている。新しい制度として都計審が建議することもできるようになったが、実例はあまりないようだ。全体として、議会はほとんど介入できていない状況と言える。

(図2)

(図3)

 議会が今後何をしていけばよいか、二つの戦略がある。一つは都市計画法に既に定められているが活用されていない既定のプロセスにより深く関与し、プロセスを充実化する、という戦略だ。もう一つは、既定のプロセス以外に独自のステップを加えていくという戦略だ。
 次に事例発表があるが、いろいろ調べたが、先進事例は余りない。また先進事例で活用された制度や手法がどこの自治体にも一般化できるかという問題もある。逆に、普通の事例、うまくいかなかった事例の中から、自分の自治体で活用できそうなものはあるか考えることも重要。そうした点を念頭に置いて事例発表を聞いていただければと思う。

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