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プラスチックのリサイクルの行方

プラスチックは二度手間をかけて選別。容器包装リサイクル法の不合理。杉並区の調査から見えてきたもの

 杉並区は4年ほどまえから、プラスチックのリサイクル収集が全域で始まりました。すべての容器包装プラスチックを対象として毎週1回びん・缶のリサイクルと一緒に収集場所に出します。
 2010年度の収集量は、4,485トン。収集に3億5473万円かか りました。収集したプラスチックは、選別梱包するため、2か所の委託業者に運ばれます。1か所は、板橋区にある新日製鉄の工場。もう1か所は足立区にある大谷清運。選別の結果、13%の残渣(ごみ)が出て、引き渡し量は3,884トン。この選別梱包にかかる費用が、2億9150万円。

 選別梱包された、プラスチックは、容器包装リサイクル協会へ引き渡され、「商品化」されます。協会といっても実際は競争入札で落札した業者に引き取られます。容器包装リサイクル協会ルートで引き取られる先は3か所です。そして、杉並区独自のルートが1か所です。

<容器包装リサイクル協会ルート>
(1)新日製鉄(板橋区)の選別保管場所から⇒日本アクシーズへ825トン。PE(ポリエチレン)とPP(ポリプロピレン)のプラスチックを混合して利用し、プラスチック板、再生樹脂、擬木、建築資材になります(材料リサイクル)。
(2)大谷清運(足立区)の選別保管場所から⇒エコスファクトリーへ28トン。ここではプラスチックをPS(ポリスチレン)、PE、PPの三種類の材質別に分別します。PSは日用雑貨や再生樹脂に、PEはパレット、再生樹脂、擬木、建築資材、日用品に、PPはパレット、再生樹脂、建築資材、農業用資材になります(材料リサイクル)。
(3)大谷清運(足立区)の選別保管場所から⇒新日本製鉄(千葉県君津)へ3,030トン。ここでは、コークスを作るコークス炉にプラスチックを石炭と一緒に投入します。コークスは石炭から作られますが、プラスチックもコークスの原料になります。この方法ではプラスチックは材質別に分ける必要はなく投入できます(ケミカルリサイクル)。

<独自ルート>
(1)大谷清運(足立区)の選別保管場所から⇒新日本製鉄(千葉県君津)へ120トン。プラスチックの物の流れは協会ルートの(3)と同じですが、協会の入札を通さず杉並区は直接、新日本製鉄に販売しています(ケミカルリサイクル)。

●プラスチックの材質別分別とリサイクル製品について
 新日本製鉄でのコークス炉原料にする場合は、材質別の選別は不要ですので、分別費用はかからないで、ほとんどすべての材質のプラスチックが活用できます。リサイクルとしては、効率的で経済的で、とても良いように思えますが、石油からできたプラスチックを石炭の代替として使ったら、資源循環の意義がないのでは、という意見もあります。
 材料リサイクルでは、材質別の分別が必要です。日本アクシーズの事例のように、あまり分別の手間をかけないでPEとPPの混合で取り出して、パレットや擬木の材料にするというのは、分別の手間は少ないですが、用途が限られます。あまり高品質なリサイクル製品はできません。それに、PSなども捨ててしまうので、ゴミが多くなります。
 エコスファクトリーの事例は、PE、PP、PSの三種類に選別します。分別の手間はかかりますがリサイクル製品の用途が広がり、高品質の製品に生まれ変わります。でも、選別の費用が高い、という欠点があります。

●ドイツではソーティングセンター統合選別
 あなたはプラスチックを見て材質の違いがわかりますか?もちろん発泡スチロールのように簡単に見分けられるものもありますが、多くは見た目では判断できません。市民が家庭から出すときに材質別に分けて出すのはかなり困難ですね。もちろん容器包装に材質は書いてありますが、やはりその記号を見て分けるのは、ちょっと負担が大きすぎます。
 ドイツでは、光学式の機械で自動選別する大規模な選別工場(ソーティングセンター)があります。選別の費用を抑え、細かく選別することで高品質なリサイクル製品に活用できます。日本では、自治体で選別保管して、リサイクル協会に引き渡し、さらに材料リサイクル工場で選別するという、二度手間をしていますが、ドイツでは家庭から回収したプラスチックはソーティングセンターで一度に材料別に選別しています。日本でドイツのような効率的な仕組みができない理由は、現在の容器包装リサイクル法の仕組みがじゃましているといえます。

●杉並区のペットボトルのリサイクル
 杉並区では収集(週1回)したペットボトルは、半分を容器包装リサイクル協会に引き渡し、半分は独自で販売しています。独自ルートでの販売価格は急上昇していて、キロ65円とのこと。独自ルートの場合、多くが中国などに輸出されます。輸出が増えると、国内でのペットボトルのリサイクル産業が成り立たなくなりますが、その傾向が、今後ますます増えそうです。また、回収したペットボトルについているキャップは、分別し、キャップだけで建築原料として販売、キロ20円で販売しています。

●2009年にも調査しています。その報告はこちらからご覧ください。

(2012年1月28日)