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【レポート】廃棄物資源循環学会セミナー

6月1日に川崎市で、いま関心が高まっている、海のマイクロプラスチック(以下、MP)汚染をテーマに、廃棄物資源循環学会のセミナーが開催されました。発生源や発生抑制策に及ぶ盛り沢山な内容なので、各報告のポイントをかいつまんで紹介します。

<第1部 講演>

■「マイクロプラスチック汚染の現状と対策」
東京農工大学教授 高田秀重氏

海洋のMP汚染の進行と海洋生物へのダメージの実態について詳しい説
明がありました。海に流入するプラスチックの量は、何も手を打たなければ、20年後には10倍に増加すると予測されているとのことです。
また、講演者も参加した海洋及び海洋法に関する国連総会非公式協議プロセス(ICP)で、対策として、サーキュラー・エコノミー(循環経済)を目指した廃棄物管理の徹底や3Rの推進、バイオマスベースの素材の利用促進などが議論されたことや、国連環境計画(UNEP)では、MPを規制する国際条約制定の検討が始まったことが報告されました。

■「河川水中のマイクロプラスチック汚染の現状」
東京理科大学教授 二瓶泰雄氏

次の3つの疑問についての検証結果を報告。
(1)様々な河川がMPで汚染されているか?
観測した国内の23河川すべてでMPが確認され、河川から海へのMPの
流出を示唆。市街地を流域とする河川でMPの数密度が高い。
(2)河川のMPはどこから来る?
市街地(川崎市)でも、観測範囲の至る所でプラスチックごみの散乱・
堆積を確認。
(3)いつ、どのように海へ流れるのか?
大きな洪水時に、山形市内で最上川に投下したGPS搭載流木・植生フ
ロート(浮き)5台中3台が1〜2日で100km以上流されて海に到達。

■「海ごみを減らすためにできること」
京都大学准教授 浅利美鈴氏

●3Rから3Cへの発想の転換
MPを減らすためには、有害物質対策のキーワードである3Cの考え方に則った対策が必要であることを提唱。
(1)クリーン(Clean)
代替物質の利用などによる製品中の有害物質の削減⇒脱プラスチック
(2)サイクル(Cycle)
回収した製品中の有害物質の適正な循環利用⇒プラスチックの閉鎖的なリユース・リサイクル
(3)コントロール(Control)
適正な無害化や安定化⇒リユース・リサイクルできないプラスチックは適正処理

●プラスチックごみの発生抑制
京都市の家庭系の燃やせるごみの場合、発生抑制が可能なプラスチック
が湿重量ベースで25.8%混入しており(平成26年度調査)、発生抑制の行動
を具体的に提示しています。

■「川崎市におけるプラスチックごみの処理について」
川崎市環境局廃棄物政策担当 北川 仁氏

・川崎市では、プラスチック製容器包装とペットボトルは分別収集・中間処理し、容リ協会ルートで資源化。
・MP汚染対策としてできることは、3Rの促進や適切な廃棄物処理。

<第2部 パネルディスカッション>

■「海洋ごみ問題の概要と対応策のひとつとしての容器包装リサイクル法」
環境省リサイクル推進室室長補佐 鈴木弘幸氏

・プラスチック製容器包装とペットボトルは、容リ法に基づいて再商品化。
・最近、プラスチック製容器包装については、収集処理コストを引き下げるため、分別収集を中止して焼却処理する動きもあって、分別収集を実施している市町村数は、全市町村の76.3%(平成27年度実績)にとどまっており、実施市町村の拡大が課題。
・プラスチックの収集量拡大のためには、製品プラスチックの一括収集も検討課題。

■「河川ごみの現状〜発生源対策に向けて〜」
全国川ごみネットワーク事務局 伊藤浩子氏

・2016年に荒川で拾ったごみの個数では、約6割がプラスチック容器包装類。ペットボトルが増え続けていて、8年連続1位。
・ごみは拾うだけではなくならず、海ごみ・川ごみの根本解決のためには、@海に出る前に川でSTOP、A川に出る前に流域全体からSTOP、B生活者一人ひとりがSTOPをすることが必要。

■「ペットボトル回収の取り組みについて」
セブン&アイ HLDGS.総務部資源リサイクル 藤乗照幸氏

●ペットボトルのリサイクルシステム
イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの店舗にペットボトル自動回収機を364台設置。1店舗で1日約1,800本回収。利用者には、nanacoポイントに交換できるリサイクルポイントを発行。
回収したペットボトルは、プライベートブランド商品のパッケージの原料として再生利用。お客様も環境に貢献しているということを実感。
●セブンイレブンのペットボトル店頭回収
2015年12月から、江東区内の店舗に自動回収機を5台設置。最近設置した3台は、コンビニ用小型回収機。1店舗で1日約400本回収。コンビニの回収機は、ごみとして捨てられるペットボトルの受け皿となっています。

■「プラスチック海洋ごみ問題への取り組み」
日本プラスチック工業連盟専務理事 岸村小太郎氏

●樹脂ペレット漏出防止対策
・1992年以来、マニュアル、ポスター、リーフレットを作成・配布。
・2000年以来、樹脂ペレット漏出防止対策アンケート調査を6回実施。
●マイクロビーズ問題への取り組み
・2016年1月に、日本化粧品工業連合会、日本歯磨工業会にマイクロビーズ問題への取り組みを要請。
・2016年3月に、日本化粧品工業連合会が傘下企業に向け、マイクロビーズの使用中止を呼びかける文書を発信。また、2016年5月に、花王がマイクロビーズの使用を2016年末までに全廃することを発表。
●新4ヵ年計画(2017〜2020年度)
・海洋ごみへの取り組み宣言運動の推進(経営者による宣言書署名・公表)。
・樹脂ペレット漏出防止対策の徹底。

(運営委員 小野寺 勲)