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学習会 『日本の廃棄物処理の仕組み』

2011年12月16日(金)、『日本の廃棄物処理の仕組み―容リ法との係わりから見る―』と題して、3R全国ネット運営委員でもある、庄司元さん(滑ツ境文明研究所客員研究員)に講演いただきました。
庄司元さん庄司さんは、長年、東京都の職員や全国都市清掃会議の調査普及部長として廃棄物行政に携わってこられましたが、現在も、滑ツ境文明21の客員研究員や自治体の審議会委員をされるなど、第一線で活躍されています。

 

■テーマ 『日本の廃棄物処理の仕組み―容リ法との係わりから見る―』
【日 時】 12月16日(金)14:00〜16:45
【場 所】 飯田橋セントラルプラザ 17F(教室Cルーム)
【主 催】 容器包装の3Rを進める全国ネットワーク

■はじめに、ごみ処理に係る法律の変遷(衛生行政から環境保全行政へ)を概観して、総論的にお話いただきました。ポイントは以下のとおり。

・1900年、伝染病予防の観点から、市町村の「衛生行政」の仕事として汚物掃除法が制定された。
→法第2条「市ハ・・・其ノ区域内ノ汚物ヲ掃除シ清潔ヲ保持スルノ義務ヲ負フ・・・」
・1954年、汚物掃除法の衛生行政は、清掃法にそのまま引き継がれた。
・1970年、廃棄物処理法の制定により、これまでの「汚物」に加えて「不要物」を含めたものを「廃棄物」とし、「廃棄物の適正処理」が目的として明記され、「衛生行政」に「環境保全行政」が加算された。が、この廃棄物処理法は他の公害規制法と異なり、汚染源(廃棄物)の排出者への規制は設けられず、規制の対象を廃棄物処理者にしているところにごみ処理の難しさが垣間見れる。また、廃棄物のうち一般廃棄物を市町村の仕事(処理責任)とした。
→法第2条「・・・廃棄物を適正に処理し、及び生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。」
→法第6条2項「市町村は、・・・一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない。」
・1991年、廃棄物処理法が改正され、法の目的に「排出の抑制」が、また廃棄物の「再生(リサイクル)」が分別・保管・収集・運搬・処分と並んで廃棄物の処理形態の一つに加えられた。
→法第1条「・・・廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、 保管、 収集、運搬、再生、処分等の処理をし・・・」
・2000年、循環型社会形成推進基本法により、適正処理の前に発生抑制と循環利用が盛り込まれた。
・2001年、2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」を受けて定められた「廃棄物の減量・適正処理のための基本方針」において、廃棄物の適正処理に優先して「廃棄物の排出抑制・循環的利用」を行うことを明確にし、廃棄物の循環利用を経ての「適正処理」を謳い、今日に至る。

■総論を踏まえて、容リ法を含む廃棄物処理の論点について、お話いただきました。ポイントは以下のとおり。

【容リ法関連】
・リサイクル(再利用・再生利用)とは、廃棄物の「循環利用」である。
・容リ法は、「容器包装廃棄物」の「循環利用」について定めたもの。
・容リ法の「容器包装廃棄物」とは、市町村が分別収集計画に基づき回収した一般廃棄物をいう。
・従って、店頭回収や自販機回収されたものは容リ法が対象とする「容器包装廃棄物」ではない。さらに、それらは事業活動に伴って排出される廃棄物であり、しかも現行の廃棄物処理法の定める区分に従い、びん・缶(金属くず)、ペット(プラスチックくず)は業種に関係なく、全て産業廃棄物となる。
・「廃棄物」とは「汚物」または「不要物」であるが、その定義が難しい。「廃棄物」という「物」は存在しない。頭の中の概念である。昭和46年10月厚生省環境整備課長通知により総合判断説が採用される。
→「占有者(所有者)の意思」(主観的要素)と「有価物であること」(客観的要素)を総合的に勘案する。
・他人の排出する一般廃棄物の処理を業として行う場合には、市町村長の許可がいるが、「もっぱら物」については、既存の廃品回収業者等において再生利用ルートが確立されており不適正処理のおそれがないことから、市町村長の許可が不要とされた。(「もっぱら物」とは、当時、廃品回収業において回収されていた古紙・くず鉄・あきびん類・古繊維を政令で指定されたもの。)
・循環型社会形成推進基本法で、「循環資源」の適正な循環的利用が謳われたが、「循環資源(有用な廃棄物)」と「有価物(非廃棄物)」との違いは明確ではない。

【廃棄物の処理体系】
・市町村の一般廃棄物処理責任は、従前の「直接処理責任」から、排出事業者責任の強化(PPP)や拡大生産者責任の強化(EPR)により、事業者責任による処理を管理する責任を加えた「統括(管理)責任」に変遷した。
・事業系一般廃棄物の場合、市町村の処理責任と事業者の排出者責任が競合する。
・廃棄物処理法の考え方は、多量排出事業者を除き、市町村が処理するのが原則だったが、近年は事業者責任が重視されている。すなわち、「事業系ごみ収集の有料化」の段階から「市町村が収集を取りやめる」に至る等、事業系一般廃棄物についての市町村の直接処理は縮小され、事業者責任が強化される方向にある。
・市町村長が、廃棄物処理業を許可できる場合は、「当該市町村による処理が困難な場合」に認められる。
・「処理困難」とは、「量の多い事業系一廃」や「夜間収集」、「処理する体制が整わない場合」に限定するのが国の考え方である。これは事業系といえども、処理許可業者による処理は、本来、市町村が行うべき一般廃棄物処理を補完するものであるという考え方が基本にあるが、事業者責任を強化する方向にある中では、今後、その補完性の見直しが必要である。

【リサイクルとごみ処理】
・廃棄物処理とリサイクル処理は、処理の態様が全く違う。
・ごみ処理の異物混入率は%オーダーだが、リサイクルはPPMオーダーである。
・平成15年の廃棄物処理法改正にあたっての中環審の場では、産業・経済界からリサイクルを廃棄物処理法から外すべきとの意見があり、国においても環境省を除く関係省庁から同様の意見があったが、「リサイクルを隠れ蓑にした不適正処理の防止のために改正は次期尚早」を訴えた環境省の反対で残った。
・リサイクルを廃棄物処理法の対象から外すことは見送られたが、合理的な廃棄物処理・リサイクル制度を確立する必要に異論はなく、「規制は厳しく、手続きは合理的に」という考え方、特に広域的なリサイクル処理に関しての手続きの合理化(収集運搬処分業に係る市町村長の許可不要等の廃棄物処理法に対する特例措置)が必要であると中環審で答申された。

■主な質疑は以下のとおり。
Q. 集団回収量は把握されているか?
a.市町村でも十分には把握されていない。
Q.事業系一廃と産廃の違いは何か?
a.廃棄物処理法上の区分は、廃棄物の「性状」によるのではなく、排出源(排出元の業種、工事の種別)によって区分される。その違いを見極めるには、まずその廃棄物が事業活動から排出されている(事業系廃棄物)かどうかを見た上で、産業廃棄物に該当するかどうかを判断し、産業廃棄物でなければ全て事業系一般廃棄物となる。廃棄物の形状だけを見ていてもその判断は出来ない。食品リサイクル法対象の食品廃棄物も現行法の区分に従えば、産業廃棄物、一般廃棄物の双方にまたがる。その数量は個別にチェックされているわけではないので、種々の計画書・報告書等からの推計値である。
Q. 市町村が収集の許可を簡単に与えない理由は?
a.いろいろあるが、過当競争等による適正処理の確保に支障が起る懸念等、処理業の現場を混乱させたくないという配慮が少なくない。
Q.あわせ産廃とは?
a.市町村の施設(これは当然に一般廃棄物処理施設)で受け入れが可能な場合(施設の能力から処理することに問題がない場合)、(事業者の)産業廃棄物を受け入れて良いことになっている。
これは、中小零細事業者にも一律に「事業者責任」を課しても、費用負担の重みから廃棄物の適正処理が確保できなくなることを避けるためにその救済を図る意図があり、その背景には、こうした中小零細事業者の産廃は、@一時に多量に排出されない、A性状において家庭系廃棄物と異なるものがほとんどない、というごみ質も考えられている。
Q.あわせ産廃のチェックは?
a.事業系一般廃棄物として市町村の廃棄物処理施設に持ち込まれるものをチェックする他に方法はない。しかし、「あわせ産廃」は、ごみ質として事業系一般廃棄物と異なるところはないので、実質的にはチェックが難しい。
Q.鎌倉では集団回収をやめてしまったが?
a.集団回収は資源ごみが対象だが、資源ごみを回収する方法としては市が回収(行政回収)するより経費的に安くなる(回収量に見合った補助金を払う方が市で回収する場合の経費より安い)ことから、今は、資源ごみについては行政回収をやめて集団回収へのシフトしている自治体が出てきている。
Q.廃棄物処理法の改正に関する環境省の意見は?
a. リサイクルを廃棄物処理法から分けるというリサイクル体系の根本的見直しは別として、現行での区分が難しい産廃と事業系一廃の見直しなど様々あると思うが、その詳細は把握していない。
もともと産業廃棄物は、第二次産業から排出されるものを想定していたと思われるが、今は産業構造が変わり、第三次産業からの排出が多くなった。このことで処理の効率性の観点からは、産業廃棄物と事業系一般廃棄物を産業廃棄物と一般廃棄物の区分で峻別する処理体系の見直しが求められるいので混乱している。
Q.不適正処理が、なぜ産廃に多いのか?
a.一般廃棄物の処理施設は完備したが産業廃棄物施設はまだその数が十分でないことがその要因として大きい。廃棄物処理法制定当時は、PPPにより産業廃棄物処理への公共関与が厳しく制限されていたことの影響である。今日は、この公共関与の制限を緩めたが、今もって施設が十分には足りていない。
Q.法律上のリサイクル率は?
a.一般廃棄物のリサイクル率は、自治体で回収されリサイクルされる廃棄物の量と集団回収された量と総発生量との割合である。これらの回収量には、リユースされるものも入っている。

以上、活発な質疑がなされ、時間を延長しながら、第5回目の学習会を終了しました。

 

(文責/3R全国ネット事務局)