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学習会 『IPPとは何か』

11月29日、 『IPP(統合製品政策Integrated Product Policy)とは何か』と題して、環境監査研究会代表幹事の後藤敏彦さんに講演いただきました。
後藤敏彦さん博学多識な後藤さんのお話は、日欧の官僚制度や法執行等の相違を俯瞰的に取り上げるなど、運動団体が陥りがちな教条的な考え方を“ガツン”とするような大所高所からの内容となりました。また、次の容リ法改正を論議する時の課題についても問題提起いただきました。

■テーマ 『IPP(統合製品政策Integrated Product Policy)とは何か』
【日 時】 11月29日(火)14:00〜16:30
【場 所】 飯田橋セントラルプラザ 17F(教室Cルーム)
【主 催】 容器包装の3Rを進める全国ネットワーク

<講演のポイント>
・日本は新たな法律が制定されると、官僚が業界団体と調整し、施行日から一斉にスタートできるが、欧州は、事前調整はなく、施行されてから動き出すことが多い。
・欧州では、理想的な政策が掲げられてもすぐに実行されるわけではなく、その実行までに10年程度のスパンで考えられている(日本では1年程度のスパンで考えられているが)。
・IPPについては、2001年にグリーン・ペーパーが出された。
・通常は、グリーン・ペーパーが出ると、1〜2年程度、検討され、その後、ホワイトペーパーが出される。その討論を踏まえて法案が作成され、最終的な法律となる。3年ぐらいは議論が続けられる。
・が、IPPについては、グリーン・ペーパーが出された後、ホワイトペーパーは出されていない。
・RoHS、REACHなど、IPPの考え方は、具体的な製品政策に盛り込まれている。
・同様に、EPRについても、製品政策として盛り込まれている。
・ただし、理想と現実には相違があり、2007年の欧州環境大臣会議では、日本のトップランナー制度が優れていると評価し(「隣の芝生は赤い」に近いか)、マネした制度を作ったところ。
・ISO26000は、認証システムではなく、ガイダンスドキュメント。西欧流の考え方であり、当初、経団連は反対したが、決定すると、経団連も企業行動憲章を改定した。
(参照)2010年9月14日 企業行動憲章 (社)日本経済団体連合会
・これまで企業は、サプライチェーンとして考えてきたが、これからはバリューチェーンとして、トータルで環境負荷を減らすことが考えられている。
・容リ法の見直しについては、自治体の収集費用をどう明らかにするかということと、トータルで廃棄物の発生抑制につなげる制度設計をどうするか、が課題である。
・なお、製品価格への内部化は、EPRの初期のテーマであり、今日の意義は変遷しているのではないか。
・かつて、日独の消費者の環境意識を調査したデータがあるが、それによると日本のほうが環境意識は高いが、実践はドイツのほうが高いとの結果である。
・消費者に近い小売りが、消費者に直接、環境配慮を働きかけると変わるのではないか。
・西欧と日本は制度的にも文化的にも違うので、西欧のしくみをそのまま日本に持ち込んでもうまくいかない。日本のほうが優れていることもある。単純な議論では広範なステークホルダーの合意形成は難しいだろう。

以下、参考情報です。
欧州委員会、統合的製品政策に関するグリーン・ペーパーを採択> 
 〜EICネット情報〜
2001年2月、欧州委員会は統合的製品政策(Integrated Product Policy:IPP)に関するグリーンペーパーを採択した。このグリーン・ペーパーは、環境にやさしい製品市場の発展を促進するため、製品に関連する環境政策の強化、再重点化を提案するもの。将来的に、製品が、資源を節約し環境への影響やリスクを小さくし、設計段階で廃棄物発生を予防するものとなることを目指す。統合的製品政策は、第6次環境行動計画においても、重要な革新的事項の一つとして発表されており、スウェーデンが議長国にある間の環境面での優先事項の一つでもある。マーゴット・ヴァルストローム環境委員は、同ペーパーは、「ゆりかごから墓場まで、いやむしろ、ゆりかごからゆりかごまでというアプローチをとるものだ」と述べ、関係者、EU加盟国、欧州議会に政策形成への参加を求めた。
統合的製品政策の目標として、以下の3点があげられている。

  1. グリーンな製品に対する消費者「需要」を喚起すること。具体的には、エコラベル、公共機関による率先的な調達などが挙げられる。
  2. グリーンな製品「供給」のため、企業のリーダシップを刺激すること。具体的な手法は、ライフサイクル情報、エコデザインのガイドライン、製品基準への環境要素の統合など。新たな事項としては、主要な関係者による製品委員会を創設することである。
  3. グリーンな製品市場の発展のために「価格メカニズム」を活用すること。例えば、エコラベルの付いている製品の付加価値税を軽減するといった課税の差異化、新しい分野への生産者責任概念の拡大、新しいガイドライン内での国家補助政策などが含まれる。

(文責/3R全国ネット事務局)