日韓市民社会フォーラム2006
東北アジアの平和のための日韓市民社会の共通課題
〜認識の共有から実践の共有へ〜

  2002年の日韓ワールドカップ共催に向けて、市民レベルでの交流が深まりつつあった矢先。再燃した歴史教科書問題と小泉首相の靖国神社参拝が、日韓市民社会の間に暗い影を落としました。このことを危惧する中から始まった日韓市民社会フォーラムも、4回目を迎えることとなりました。

 過去3回、足掛け4年にわたる様々な社会問題に取り組む日韓市民社会相互の交流では、北東アジアの平和に向けた私たち市民の役割について議論してきました。そして、地域に「市民の政府」をどうつくるのか、お互いの歴史認識をどう共有するのか、自立した個人からなる社会をどうつくるのか、などについて意見を交換する中で、日韓それぞれの市民社会の差異を認識する一方で、とりわけ地域や生活レベルの活動と課題の類似性・同一性、そして交流の意義を実感することができました。

 今回のフォーラムでは、これまでの議論の積み重ねを生活の現場レベルでどのように活かせるのか、地域の共通の課題とどう向き合っていけるのか、相互の交流と議論をより一層深めていきたいと考えています。

 そうした観点から、日韓それぞれの草の根で運動を実践している市民を報告者にお迎えし、次の分科会を設けます。

(A)北東アジアの平和を担う市民教育

(B)地域における市民政府づくり―女性がつくる政治社会

(C)多文化共生と個人の自立・平等―高齢者、障がい者、移住労働者

(D)グローバル時代の食の安全と農業

  日韓市民社会フォーラムへのみなさんの参加で生まれる新たな出会いが、北東アジアの平和につながる日韓の国境を越えた市民社会相互の絆を深めることでしょう。

■日程 : 2006年10月12日(木)〜13日(金)

■場所 : 国立オリンピック記念青少年総合センター

■主催 : 日韓市民社会フォーラム実行委員会(日本)/アジア市民社会運動研究院(韓国)

■参加費 :一般 5,000円、学生 2,500円★2食付、両日とも

★来日する韓国からのゲスト

*お問合せ・お申込は、こちらのフォームにご記入の上、メールにて実行委員会宛にお送り下さい。

★チラシはこちらからダウンロードいただけます。

【プログラム】
■第1日(10月12日)

◎全体会1 13:30〜16:30

13:30 開会の挨拶
  〈日〉三宅 弘さん(日本側実行委員長)
13:35 〈韓〉カン・ムンキュさん (アジア市民社会運動研究院院長) =予定=
13:40 全体会1
  コーディネーター:杉田敦さん(法政大学法学部教授)
13:45

基調報告1「文化交流と北東アジアの平和」
〈日〉辻井喬さん(詩人・作家)

  【略歴】1927年東京生まれ。日本ペンクラブ理事。日本文藝家協会副理事長。日本中国文化交流協会会長。マスコミ九条の会呼びかけ人。憲法再生フォーラム代表。朝鮮戦争勃発の年に大学入学して知り合った在日韓国人と経営学を専攻する主人公との交友を’88年ソウルオリンピックまで、複雑に曲折する祖国への思いと次世代の姿とを描いた『国境の終り』という小説もある。
   
14:15 基調報告2「東北アジア共同体の誕生のための争点―日本と韓国の役目」
〈韓〉朴庚獅ウん(大韓民国 人権大使)
 

【略歴】ソウル大学社会学科を卒業し、ドイツのGoettingen大学社会学修士、博士取得。インド翰林院名誉哲学博士取得。海兵隊将校 (1965)、ソウル大社会科学大学社会学科で教授として1976年から1982年まで6年間社会学を教えた。同期間財団法人クリスチャンアカデミーの副院長を担当。1982年2月1日から1999年12月31日まで18年間スイスジュネーブ所在 WCC(World Council of Churches) アジア総務とアジア政策委議長。2000年1月1日に帰国して聖公会大学大学院教授。北東アジア平和研究所を開設し運営している。現在は大韓民国人権大使、警察庁人権委員会委員長として活動中。ネパール政府の人権賞、中国無邑県名誉県民、南太平洋タヒチ島功労賞などを受賞。著書に『人権大使が体験した韓半島とアジア』など

   
14:45 特別ゲスト「中国からみた“東アジア”」
〈中〉王敏さん(法政大学国際日本学研究センター教授)
  【略歴】1954年、中国・河北省承徳市生まれ。大連外国語大学日本語学部卒業、四川外国語学院大学院修了。お茶の水女子大学で人文科学博士号を取得。現在、法政大学教授。山崎賞、岩手日報文学賞賢治賞などを受賞。『宮沢賢治・中国に翔ける思い』(岩波書店)、『花が語る中国の心』(中公新書)、『中国人の愛国心日本人とは違う5つの思考回路』(PHP新書)など著書多数。
   
15:05 休憩
15:15 質疑応答+議論
16:20 まとめ(〜16:30)

◎自主企画ワークショップ 18:00〜20:00
(1)日韓ODA改革と世界の貧困に対するアジアの役割
  (主催団体:ODA改革ネットワーク・東京/後援:国際協力NGOセンター(JANIC)

(2)日本型政治状況におけるインターネットメディアの活用
  (主催団体:日本インターネット新聞社

(3)自由討議:歴史認識と教科書問題をめぐって
  (主催団体:教科書・市民フォーラム)

■第2日(10月13日)
◎分科会 9:30〜16:00

分科会A 北東アジアの平和を担う市民教育

教育とは、本来、国が「国民」をつくるために画一的に行うものではなく、市民が次世代や同世代の人びとと共に学びあったり継承するものである。そうした観点から、北東アジア地域の平和を担う市民の数を増やしたり、質を高めるための「市民教育」の在り方を考える。
   
コーディネーター
〈韓〉李 貞玉さん(大邸カトリック大学教授/国際民主連帯共同代表)
コメンテーター
〈日〉内海 愛子さん(恵泉女学園大学教授/アジア太平洋資料センター理事)
   
午前「平和を脅かす現状を知る・伝える」
「東北アジア構想と実践」
  〈韓〉鄭 聖憲さん(韓国DMZ平和生命の村推進委員会代表)
  【略歴】南北江原道協力協会理事長及び韓国DMZ平和生命動産推進委員会代表を歴任。東アジア情勢の中で平和のための市民社会の理解と協助を模索するために北朝鮮を含めた世界各国の全面的な核廃棄、南北交流協力拡大、生態保全・復元プログラム、韓半島分断の象徴である DMZ 人類公園及び平和公園化などの活動をしている。
 
「終わらぬ戦後と次代へつなぐ平和思想」
  〈日〉柴田 健さん(沖縄平和ネットワーク首都圏の会)
 

【団体紹介】平和教育を実践するために沖縄県の市民によって結成された「沖縄平和ガイドの会」が前身となって、1994年に「沖縄平和ネットワーク」として発足。沖縄戦の事実と基地の実態を伝えるほか、戦争遺跡の保存・活用のために、調査をもとに各自治体への保存要請や、特に嘉手納基地を中心とした県内主要基地の監視行動を行っている。

   
午後「平和につながる新たなアプローチ」
「インターネットを活用した平和運動」(仮)
  〈韓〉李俊揆さん(平和ネットワーク政策室長)
  【団体紹介】平和ネットワーク(Civil Network For A Peaceful Korea)は 1999年設立された団体で韓半島問題に対する言論やメディアのモニタリング、軍縮問題の積極的な争点化、北朝鮮人権セミナーチーム、政策フォーラム、EPS(English Peace Study)などの活動をするほか、英語や日本語ホームページの運営なども行っている。
 

「もうひとつの韓流――隣人への興味がつくる平和」

  〈日〉福田紀子さん(PARC自由学校受講生)
  【団体紹介】PARC自由学校は1982年にスタートした市民のためのオルタナティブな学校。毎年、時代を先取りしたテーマでさまざまな分野についての講座を開いている。普通の教育機関では体験できないような講座を数多く開講。

分科会B 地域における市民政府づくり―女性がつくる政治社会

韓国では、今年、5月末に統一自治体選挙があった。日本では2007年4月に統一地方選が行われる。韓国・日本の双方で、市民社会を強くするには、分権を進め、市民自治・市民による地域民主主義を広げることが重要。生活者の政治参加が、政治文化を変えていく。両国で、女性達の生活者政治を地域で進める活動に着目し、その経験交流と未来に向けた取り組みについて意見交換する。
   
コーディネーター
〈日〉廣瀬克哉さん(法政大学法学部教授)
   
午前「市民自治をひろげる取り組みを地域から」
「5.31 地方選挙を基点として見た韓国の女性政治勢力化と生活政治運動の方向」
  〈韓〉呉有錫さん(女性政治勢力民主連帯 常任代表、聖公会大学 民主主義と社会運動研究所教授)
  【略歴】社団法人女性政治勢力民主連帯常任代表、聖公会大学デモクラシーと社会運動研究所教授,梨花女子大学大学院政治(歴史)社会学博士, 進歩政治研究所理事。前韓国産業社会学会運営委員長
  〈韓〉金銀姫さん(女性政治勢力民主連帯事務局長)
  【略歴】現社団法人女性政治勢力民主連帯事務局長, 梨花女子大学大学院法女性学修士. 女性政治勢力民主連帯は女性の政治参加拡大のための制度改革運動,女性政治候補者発掘育成及び次世代女性政治教育,有権者運動,議定監視活動などを遂行している民間団体.。
 
「地域の実践活動から自治する力をつける」
  〈日〉茂木千佳子さん(元西東京市議会議員)
 

【団体紹介】平和教育を実践するために沖縄県の市民によって結成された「沖縄平和ガイドの会」が前身となって、1994年に「沖縄平和ネットワーク」として発足。沖縄戦の事実と基地の実態を伝えるほか、戦争遺跡の保存・活用のために、調査をもとに各自治体への保存要請や、特に嘉手納基地を中心とした県内主要基地の監視行動を行っている。

   
午後「市民自治をゆたかにする市民政治」
「地域住民運動と地域政治づくり運動」
  〈韓〉張鉉子さん(前大田民選3期基礎議会議員)
  【略歴】前大田市基礎議会議員。大田女民会は地域女性たちが集まって女性たちの人権と生活の中での女性運動、代案のある女性運動を共にする女性運動団体です。女性の目で世の中を見て暮らしの向上と平等な社会を目指し、民主的参加と自治が中心になる民主運動と持ちつ持たれつの連帯を重視するコミュニティである。
 
「市民政治を拡大する力,どう作るか?」
  〈韓〉李賢珠さん(前ソウル陽川民選3期基礎議会議員)
  【略歴】毎日経済新聞社18年勤務、ソウル陽川区議員(2002-2006年)活動、女性政治勢力民主連帯理事。
 

「女性・生活者の政治参加をすすめるしくみ」

  〈日〉又木京子さん(全国ネットローカルパーティ研究会世話人、元神奈川ネットワーク運動代表)
  【略歴】1949年生まれ。1987年より厚木市議(2期8年)、1995年より神奈川県議2期をつとめ、神奈川ネットワーク運動の代表として活動をする傍ら、1987年より、多数の高齢者福祉・子育て支援施設の市民事業づくりに関わる。

分科会C 多文化共生と個人の自立・平等―移住労働者、障がい者、高齢者

日韓双方で問題となっている外国からの移住労働者との共生に主な焦点を絞り、彼らの参加による多様な文化があふれる市民社会のあり方について議論を深める。
   
コーディネーター
〈韓〉林承彬さん(明智大学行政学部教授) 
   
午前「移住労働者を取り巻く現状とサポート」
「多文化地域共同体形成の可能性:安山市原曲洞“ボーダレスな村”の実験」
  〈韓〉オ・ギョンソクさん(社団法人 無国境村常任理事)
  【略歴】高麗大学校で社会学博士学位を取得し、韓神大学民主社会研究院で研究教授として在職中。地域社会運動及、移駐労動者共同体形成に関する研究中。
 
「移住労働者の増加と子どもの教育について」
  〈日〉王慧槿さん(多文化共生センター・東京代表)
 

【団体紹介】阪神淡路大震災の際に外国人被災者に情報提供を行った「多文化共生センター」の東京事務所として2001年4月に開設。2006年4月に多文化共生センター東京として独立し、同年5月にはNPO法人に認可された。海外にルーツを持つ子どもたちへの教育事業を中心に、外国籍女性の子育て支援などの事業を行っている。

   
午後「共に暮らすためのまちづくり」
「地域住民運動と地域政治づくり運動」
  〈韓〉金敬敏さん(大邱YMCA 官長)
  【団体紹介】大邱YMCAは大邱三徳洞一帯での運動をきっかけに、壁画を描くこと、緑の店を通じた物物交換といった“村作り運動”を推進し、緑地空間の創出とともに暮したい地域を作るための近隣共同体運動を展開している。
 
「障がい者の権利としての自立とまちづくり」
  〈日〉岩間有希さん(NPO法人あしたや共働企画
  【団体紹介】地域の中に、ハンディをもつ者ももたない者も共に働く場をつくりたい、と1999年に設立。2004年にNPO法人として認証を受ける。現在、地域にひらかれた二つの店を中心にさまざまな活動をしています。 

分科会D グローバル時代の食の安全と農業

日韓両国の農業は、国内のいびつな産業化の進展とWTOや財界による自由化の圧力のもとで、厳しい状況におかれてきた。そして、輸入農産物の激増や狂牛病のような「いのちの危機」によって、食生活も脅かされている。だが、有機農業の推進、都市生活者の農業への参加、地産地消の広がりなどの新しい動きも活発である。それらをとおして、自給を高め、環境を守り育てる食と農の方向性を明確にしたい。

   
コーディネーター
〈日〉大江正章さん(コモンズ)
   
午前「WTOの問題点と対抗する活動」
未定
  〈韓〉全国農民会総連盟=予定=
   
「WTOによって暮らしはどう影響されるのか」
  〈日〉佐久間智子さん(「環境・持続社会研究センター」(JACSES)理事)
 

【略歴】1966年生まれ。市民フォーラム2001の事務局長など90年代から市民運動に参加。おもに経済のグローバル化の社会・開発への影響に関する調査・提言を行っている。子育てをとおして、食と農業への関心を深めてきた。持続可能な発展や貿易のあり方などに対する共著多数。

   
午後「食と農の新しい道」
「食品安全と農業保護のための社会協約運動」
  〈韓〉呉恒植さん(韓国生協連合会事務処長)
  【略歴】現在韓国生協連合会事務処長であり、前仁川生協常務理事、前韓国生協連帯物流管理部長として活動。韓国生協連合会は2002年に設立され、60個の地域生協と約4万名の組合員がある消費者生活協同組合の全国的な連合組職として食品安全運動,農業を守るための活動、地域で生活の中の協同社会づくり、生協運動の大衆化のための生協設立支援活動をしている。
 
「都会の百姓です。元気です」
  〈日〉白石好孝さん(農業。大泉風のがっこう主宰。NPO法人畑の教室理事)
  【略歴】1954年、東京都練馬区生まれ。野菜農家。元・全国農協青年組織協議会委員長。直売、体験農園、学校給食への供給と授業参加、精神障害者のデイケアなど、都市農業のメリットをフルに活用し、楽しい農業に精を出している。また、人をひきつける講演の美味さには定評がある。

◎全体会2 18:00〜20:00

分科会報告+共同決議文採択