全体会議1 討論

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

 北東アジアの平和と日韓市民社会の役目という主題で発表をしてくださった朴相摶q師、そして安藤博教授ありがとうございます。それでは発表内容に関連して、平和を作る女性会代表の金允玉さん、法政大学教授の杉田敦さんからのコメントをいただきます。

金允玉(平和を作る女性会 代表/韓国挺身隊問題対策協議会 共同代表)

 お二人の主題発表に全面的に賛同しながら、私の経験に照らしてコメントを依頼された主催者のお考えを汲んでいくつか申し上げます。私はいままで女性の観点で平和研究と平和運動をしてきました。具体的に、私はアジアの平和と女性の役割シンポジウムと日本軍慰安婦問題に深く関わってきました。この二つの経験は、北東アジアの平和のための女性たちの連帯の実践でした。

 皆さんご存知のように、平和の概念は1960年代以後、ヨハネガルトングの研究結果によって在来的な戦争の反対概念としての平和ではなく、構造的な暴力の反対概念として認識されています。9.11テロ以後、ブッシュ米大統領は“21世紀は戦争の世紀だ”という暴言をはきましたし、世界は消極的な平和の概念に巻き込まれつつありますが、このような戦争の原因が、構造的なテロの原因である貧富格差の問題、難民の問題、世銀やIMFなどにあるということを私たちは分かっています。ドイツの平和倫理学者ウォルフガングフーバーは、平和を保持し、増進して、更新する行動をすべきだという主張をしています。平和の状態を保持して、一歩進んで増進させなければならないし、これを築こうとする市民の動きで国家権力と市場を公共善の領域に押し込めなければならないというのです。

そうした意味で私たちの運動は、これに符合したことだったと思います。朝鮮半島の平和問題は、北東アジアの平和問題の鍵だと言えます。阻まれた民間交流の最初の試みが“アジアの平和と女性の役割シンポジウム”でした。これは1991年5月、東京で三木睦夫前総理の奥である土井孝子さんと清水洋子議員など朝鮮半島の分断の責任が日本にあるという主張をする良心的な日本の女性たちの招待で南と北の女性たちが集まって始まったものです。当時の次回はソウルで集まろうという約束を守って、91年11月ソウルで第2次シンポジウムが開かれました。これは分断線を超えて南と北の民間女性が集まった歴史的な出会いでした。92年9月、韓国と日本の代表が分断線を超えて平壌に行き、金日成主席とも会って、女性たちが朝鮮半島の平和のために努力して欲しいという激励を受けました。日本の植民地時代における過去の清算を主張した良心的な日本女性たちの役割が、この集まりを成功させましたし、まさに北東アジア平和のため南・北・日本の女性による連帯の良い見本であったといえます。当時は盧泰愚軍事政権時代で、両側が梗塞された状況の中、女性たちが分断線を超えて集ったことは、まるでタンクの前に花を持った女性たちの姿を想起させました。これを通じて、お互いに歴史認識を共有しながら一緒に平和のため連帯することが可能でした。

 ビックトルコーシーマンというコーネル大学の教授は、東欧圏の崩壊以後、アメリカがスポンサーになった垂直的なグローバリゼーションではなく、国境を超えた民衆の連帯を水平的グローバリゼーションを主唱し、その好例として私たちの2000年東京女性国際法廷を上げました。日本軍の慰安婦制度に対して、国家が罪を問わないために、世界市民がこれを裁判するということを明らかにしたこの法廷では、天皇裕仁に有罪を宣告し、日本政府に法的賠償をしなければならないと宣告しました。この女性国際法廷は、98年それが決まった後、2年間準備したことだが、その準備期間中ボーダーレスな女性たちの協力が成り立ったし、正式な法廷と同様のさまざまな証拠と手続きをそのまま踏みました。

 10ケ国から集まった64人の慰安婦生存者たちは、その判決で名誉が回復されました。極東軍事裁判では処罰されずに放置された女性に対する制度的な性暴行、慰安婦の問題は、戦争犯罪であるという国際法的認証を受けるようになりました。このように、私たちはアメリカのような国民国家が新たにつくった国際法的空間を、国家ではない市民と女性の利益のために使ったのです。実はこのような民間法廷は、法が市民の道具で、政府に帰属するものではなく、国家が正義を実現し市民を保護する義務を果たさなければ市民が介入するという前提に立っているのです。5月11日から13日まで、私たちはこの法廷の判決の実践を共同で作業するため東京で集まります。このように、私たちは未来のため水平的な共同作業をしています。

 ここでまた考えることは、最近起きた“作る会”の偽歴史教科書の問題です。私は97年から厳然と記録されていた慰安婦の全面的な削除という事態に怒りながら慰安婦であったお婆さんたちと一緒に、日本の議員会館の前で強く抗議しました。この時、日本の市民団体の会員が一緒に参加してくれたし、日本の文部省に抗議訪問をした時には日本の市民団体の会員500人が、私たちと一緒に文部省を囲みながら“人の鎖”を作りました。日本の市民団体でも、このような事は初めての事だと言われました。

 そこで手を一緒に取った杉並区の女性たちが、継続的な運動を通じて、この歴史教科書を不採択にしたという話を後で聞きました。日韓市民の連帯が、偽造された教科書の採択率0.3%に止めるという成果をあげたのです。私たちはこれをきっかけに、去年から日韓女性の間で歴史認識共有のため、日韓女性共同歴史教科書編纂の作業を始めました。このプロジェクトはこれから3年間で行われ、日韓女性関係史、使われた歴史教科書内のジェンダー概念の分析などが行われます。私たちは慰安婦問題を通じて日本の女性たちと多くの連帯をしてきました。しかし日本政府はドイツ政府とは違って、95年の敗戦50年を期して賠償をしないということを前提に、いわゆる女性のためのアジア平和国民寄金を設立した後、慰安婦たちに慰労金を支給してこの問題を解決しようとしました。5年の期限が終わる5月10日まで、日本政府は多様かつ陰性的な方法を取りながら、私たちのお婆さんたちにこのお金をもらいなさいと言っています。それでも私たちのお婆さんたちは受けないといいますが、お金の魅力の前に負ける方々が多いかも知れません。

 教科書問題も、98年の金大中・小淵パートナシップ共同宣言後、小淵首相は当時の日韓間の歴史問題に対して、謝りながらこれから若い世代に正しい歴史認識を持つようにしなければならないと言ったし、その後、新しい教科書が作られましたが、2年が経つ前に今日のような事ができたのです。これは国家と市民運動間の対照的な経験だと私は思います。 

結論として、私は須田先生があいさつでおっしゃったように、同じ地平にたった市民の水平的なグローバリゼーションに希望をもっています。慰安婦の法廷運動、日本への戦後賠償法廷運動の努力もその一つだと思いますし、日立民族差別運動の勝利もそうだと思います。そしてピースボートを含めて私たちの水曜日集会で出会った多くの日本の方そして9.11テロ事態後、アフガニスタン女性のために、多くの国でブッシュ大統領の宣戦布告に反対する女性たちが手紙の往来をしています。このような韓日の信頼を土台にした連帯の経験を通じて、私は皆さんに私たちがこれから希望を持っても良いと申し上げながら私の発表を終えたいと思います。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

金允玉先生お話ありがとうございます。お二人の主題発表者が北東アジアの平和のために国家と政府の次元でできない事を市民社会が引き受けることが可能だと言われましたが、金允玉先生は実際の経験や事例を通じて、私たちに発表をしてくださいました。次は、杉田敦法政大学教授におねがいします。

杉田敦(法政大学法学部 教授)

国家の退場が、先ほどから話題になっています。たしかに自治体との関係、あるいはNGO・NPO、CSOとの関係、そしてとりわけ多国籍企業に対して、国家がかつてのような指導力を失ったということは事実です。しかし、国民国家(Nation State)がただちに崩壊しつつあるかというと、必ずしもそうではない。

 つまり、日本社会という単位を囲い込んで、その内部を最適化しよう、内部の物事を管理しようという発想は、弱まるどころか、むしろ強まっていると私は考えます。911事態は、境界線によるセキュリティの維持というこれまでの近代政治学の基本的前提について、最も象徴的な形でその不可能性を露呈しました。アメリカほど強大な軍事力、情報力、経済力を持っていてもセキュリティを完全に維持することは不可能であることが明らかになりました。突然、中心においてあのような事態が起こった事で、国境線の意味についての根本的な疑問を人びとに持たせたわけです。

 私は、今回の9.11を一つのきっかけとして、境界線でセキュリティを守るということ自体の不可能性が、次第に認識されていくと思いますが、今すぐにそうなるわけではありません。その一つの表れが、日本で現在進行している有事立法、緊急事態法、住民基本台帳法などをめぐる動きです。国家だけでなく、民間企業や自治体も含めたいろいろなセクターが連携する形で、日本の監視社会化・規律社会化が進行しています。これは日本という単位を、あるいは、日本の中のある限定された部分を守るために、リスクを外部に放逐しよう、排除しようということです。しかも、こうした動きを、日本の国民がかなりの程度支持していること。私たちは、この事実から出発せざるをえません。その証拠に、有事立法や監視社会化の動きに対する反対運動は非常に弱い。社会のこうした動向は、へたをすると、外国人差別と連動してくる可能性があります。今後長い不況の中で失業率が高まり続ければ、ヨーロッパなどと同じように、外国人排除という世論が高まる危険性があります。そう意味で、事態は決して楽観できないと思っています。

 ある部屋の空気を快適にするために外部に排気するエアコンのようなやり方を、ヒートポンプ式の政治と呼んでも良いと思います。しかし、いくら排気しても、われわれは、いつかは部屋を出て外を歩かなければなりません。真夏の東京では、真夜中でも外気温は下がりませんが、それと同様の現象が世界的に起こっていて、一部先進国が内部のリスクを極小化すればするほど、外部にリスクが蓄積しているわけです。

 これを根本的に解決するためには、そうしたやり方そのものを反省する必要があります。ただし、どこから手をつけるかというのは極めて難しい問題です。もちろん様々な市民運動が力を持つことは必要ですが、同時に、経済の問題を無視することはできません。お金の流れは、ただ変えるべきだと言えば、変わるというものではありません。金が流れてこなければ、どんなに良質な活動でも継続不可能になるということも事実です。現在は、企業が、一番力を持っていて、金を動かしながら自由自在に国境を越えています。しかも、そういう国境の越え方をグローバル・スタンダードだとして、アメリカ政府やアメリカ企業が中心となって世界中に押し付けています。彼らは、それが普遍主義的なルールだと言います。これは誰でも参加できるルールであって、参加してない人々がいるとすれば、その人々に問題がある。だから、市場ルールに反して行動する人間をあぶりだして攻撃しようというのが、現在のアメリカです。

 しかし、市場主義とは、誰でも参加できるとされながら実際には一部の人しか参加できないルールであり、普遍主義的な言葉遣いにもかかわらず、実際には排他的です。目下のところ、われわれの前では、こうした偽りの普遍主義だけが隆盛を誇っていますが、ここにいらっしゃる方々の実践の中から、市場的な普遍主義とは違う国境の越え方がようやく見えてきたところであり、今後われわれは、理論と実践の往復運動の中でそれを見つける作業をしなければならないと考えています。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

 どうもありがとうございます。指定討論のお二人が主題発表に対して補完的な発表をしてくださいました。北東アジアの平和のため、その他の提案や質問を受けて、最後に二人の主題発表者からお話をいただきます。

李康鉉(ボランティア21 事務総長)

 私は先に江橋崇先生の指摘の中で、NGOのリーダーが交替されていていないとおっしゃったことに対して、韓国の事情を申し上げます。韓国の場合、そう思う方とそうではないと思う方が混在しているようです。ある面では、若い人びとが多いようで、ある面では重要な決定はシニアレベルでばかり成されている側面があったりします。私が提案したいことは、韓日市民社会の活動が主に既成世代が主として動いており、過去と同じつらい経験をしていない青年たちに、新しい未来指向の機会を与えるため、私たちはどんな努力をしているかということです。私はこれがこのフォーラムで私たちが扱わなければならない重要な課題だと思います。

 最近私たちは11月に、世界ボランティア大会をソウルで開催することを準備しながら青年逹のフォーラムを別に準備しようと思っています。去年12月日本では世界青少年ボランティア大会が歴史上初めて開かれました。あの時参加した日本の青年が、今年の韓日ワールドカップ共同開催に際し、両国の国内で起きている青年の新しい文化を見せようと、この3月と4月にソウルを訪問しました。韓国のパートナーにそうした意義への賛同を求めましたが、同意を得ることは簡単ではありませんでした。果して私たちはどんな考えを持ってこんな話のみを持っているのか思うべきです。

 または安藤博先生のお話の中で、北朝鮮を指したようですが、日本の一番頭の痛い相手という表現は安藤先生個人的な考えか、または日本社会全体が北朝鮮を頭の痛い相手と捉えているのかをお尋ねしたい。もし、それが日本の全般的な意見なら平和問題解決のためには深刻ではないかと思うからです。そして、不審船に対する日本政府の撃沈が果して最善の選択だったのかをお尋ねしたい。

金雲鎬( 慶煕大学校NGO大学院 教授)

 韓国と日本の市民社会で働く人びとが、これほど集まったことがあるのかを考えて見ると、特定の主題を持って集まったことはあるものの、実質的に市民社会の役目について議論するのは、これが初めではないかと思います。だから、私にはこの会議に対する期待がすごく大きいのです。なぜなら、その間韓国と日本間には政治、経済、文化的問題に対しては多くの論議の場があったが、実質的に市民がそのように率直に論議することができる場はなかったからです。私は1999年ソウルNGO世界大会組織委員会で働いた事があります。あの時、須田先生にも日本でお目にかかりましたが、私はこのような機会がすごく重要だと思います。

 私が申し上げたいことは、私たちが平和について語る時、さきほど金允玉先生が構造的な暴力の反対概念としての平和とおっしゃいましたが、今、私たちが語る平和とは、政治的平和なのか、経済的平和なのか、あるいは社会文化的平和なのか、または私たち心の平和なのか。こうした定義が必要だと思います。なぜならば世界に190ケ国あれば、190個の平和の概念があって、各個人個人にそれぞれの平和の概念があると思います。そうした意味で、韓日市民社会フォーラムで期待する平和とは何なのかを率直に議論する機会があればいいと思います。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

韓日間北東アジアで論じなければならない平和の概念定義が必要だという指摘を金教授がしてくださいました。

李昌鎬(中央日報市民社会研究院 副所長)

 金鎭R総長が、今後の北東アジアで中国は中国なりに、日本は仕事をしたなりに、韓国は韓国なりにナショナリズムが落ち着くようになるはずだと予想してくださいましたが、私はこの点を印象深く聞きました。ナショナリズムとは、結局国家利益の衝突を意味します。無限競争時代が21世紀のパラダイムとする場合、ナショナリズムがその中に早く便乗すれば、その国家は発展の礎石を用意することができるということを人類はもう経験しました。日本と韓国がその代表的な例だと言えます。

 日本は19世紀末、近代科学が発展する時、ヨーロッパから技術と科学を先に受け入れて先進国として発展したし、韓国はその便乗が遅く、20世紀は苦痛を感じなければなりませんでした。もし21世紀の科学科技術を先頭にした新自由主義が、もう一度先導する時、そこに先に便乗するのかの可否がナショナリズムで現われる時、韓国と日本の国民がお互いに新自由主義の発展を向けて国民的な要求をして来る時、果してNGOは世界、市民社会ではどのような理念と信念体系でこれを乗り越えながら成長を助け、一方で平等を達成することができるのかについてお伺いしたいと思います。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

 民族主義を先に立たせた国家間の競争を、NGOがどう賢明に乗り越えながらNGO本来の役目を果たせるのかという点について問題提起をしてくださいました。

徐京錫(経済正義実践市民連合 常任執行委員長)

 韓国ではアメリカの覇権主義が世界平和を脅かす重要な要因ではないかという心配と警戒が多く見受けられます。特に、韓国ではその点によって、反米的な傾向を見せたこともあります。日本の知識人はその問題についてどう考えているのかを知りたいと思います。

李種三(先文大学)

 今は、国家が退場して、市民社会が登場する時代だと言われています。私は国家なしには個人は存在せず、個人なしには国家は存在しない社会だと思います。このように国家と個人がどうやって調和をもたらすことができるのかという点から平和を論議しなければならないとおもいます。個人的な意見としては、個人と国家が一緒に共存するフレームでは、個人の利己心と国家の利己心を調節するフレームが必要だと思います。事実、個人の利己心は多くの非難を浴びますが、国家の利己心は時々善だと認められます。この点について、どう思っていらっしゃるのか教えてください。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

 国家と個人双方の調和のとれた関係が平和をもたらすのではないかとう意見でした。

下羽初枝(埼玉県西部地区消費者団体活動推進世話人会 代表)

 日本で市民運動をやっているといっても、私の場合は、ごく限られた地域の環境問題や教育問題に主婦的な発想で関わっています。 今日、経済が非常にボーダレスになって、世界中でいろんな問題がたくさん出てきている中で、貧困や環境問題もボーダレスとなってきています。

 日韓の間でも、経済や環境問題がボーダレスになっている中で、韓国の市民は、どの問題が日韓の間での一番の問題だと思っているかをお聞かせください。と同時に、その問題を解決するために、私たち日韓の市民がどう対処していくべきかということについてもお教えください。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

主題発表者お二人から回答をお願い致します。

安藤 博(東海大学平和戦略研究所 教授)

 まず、やや年配者に偏った観のあるこのような集まりの試みを、若い世代に伝えていくかねばならないという件については、わたしは今日学生さんを一人ここに連れてまいりました。それでとりあえず、わたしなりに責めを果たしたとご了解ください。

次に、北の脅威についてご質問、これが日本国民全体の認識なのか、そうだとすれば大変危険なことだということでした。「北の脅威」は、日本政府が安全保障に関する立法などをする場合、ほとんどいつものように直近の脅威として持ち出されます。しかしながら、実際には、日本と米国が向こう20年、30年にわたる安全保障上の問題としている国家は、中国です。ただ「中国の脅威」をあからさまに持ち出すわけにはいかないので、その代わりに「北の脅威」が巧妙に利用されているという面があります。

私自身が「北の脅威」をどう捉えているかに触れておきましょう。最近のテレビで、ピョンヤンで金正日を称える大規模なマスゲームが行われる様子が写されていました。海外メディアも招待してのことです。あの吐き気を催すようなマスゲームをすばらしいと思う感覚をもった統治者のいる国家が近くにあるのは、日本の安全を考えれば、いささか剣呑なことだ思ったというのが半分。と同時に、類似の状況が、半世紀前の日本であったのだ、他人の事ばかりは言えない、という感想が後の半分でした。

次に、「米国の覇権主義」を日本の知識人がどう捉えているかということ。わたしは「日本の知識人」を代表する者ではありませんが、知識人を観察することはしています。この件では、大変はっきりと二つに分かれています。半分は、「米国の覇権主義」を苦々しく思い、これが日本の安全のためにも良くない影響を有すると考えている人びと。もう半分は、アメリカは、軍事面、経済面、文化面の三者を併せ持つ唯一の超大国であるのだから、これを煽て元気にして、世界の大きな問題に対処するのに役立てようという観点から覇権主義をみています。

朴相掾i参与連帯 共同代表)

 二、三の大きな質問がありましたが、そうした質問に対する解答が3日位に出るわけはありません。そして市民運動に若い人がいないという意見に対しては、今、私の年齢になっている人びとは、みんな若かった時から始めて今の年齢になったのです。たとえば若い人をどのように参加させるのか。この参加の意味は常勤者として採用したりボランティアとして活動してもらうことですが、これは本当に重要な問題です。例えば参与連帯では給料がひくいのに、大卒の優秀な人たちが幹事として仕事をしています。ところが、幹事を2人選ぼうと思うと100人が応募してきます。私たちはその中の優秀な2人のみを選ぶわけですが、それ以上の人員を選ぼうと思うと、財政的な問題に直面してしまいます。私たちの社会でお金をたくさん儲けている社会階層の一つが弁護士ですが、参与連帯には司法試験に合格した人びとが20名ほど活動に参加したいとやってきます。その中には判事、弁護士、検事にならずに市民運動をするという人々が毎年、増えています。そうした意味で、我が国の市民運動はいつも若いと思いますし、したがってそれほど心配しなくても良いことだと思います。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

 韓日間の青年の交流問題、平和の概念問題、新自由主義体制下でナショナリズムが衝突する中でNGOがどのような活動をできるのかに対する問題、韓日間で最も緊急を要する市民運動の課題について、姜?奎院長の意見を聞きたいと思います。

Kang Moon-kyu(アジア市民社会運動研究院 院長)

 私は個別の回答ではなく、韓日間の市民運動の課題に対して述べたいと思います。韓日関係の平和の増進や相互理解の増進の核は、歴史清算の問題だと思います。日本は世界の経済大国だが、過去に侵略経験を持ち、それを清算することができないという挫折感が韓国国民の平均的な感情で、多分NGOも同じ考えを持っていると思います。

 不幸にも私たちにはヨーロッパのモデルがあります。ドイツの戦後処理の方法が、あまりにも理想的だったために、北東アジアで同様の処理がなされなかったということが不幸だというのです。朴相摶q師の提案にもあったように、小淵総理と金大中大統領が共同歴史教科書を作るための委員会を作ると言っていますが、私は共同歴史教科書の下書きも出る可能性がないと見ています。したがって私たち市民社会で、そうした試みをしなければならないと思います。

司会:孫鳳淑(女性政治研究所 理事長)

 ボーダーレスで韓日間の交流を通じて解決しなければならない多くの課題があるようです。1時間半では、北東アジア地域の平和定着のため韓日市民社会の役割を十分に議論することはできませんでしたが、これからこの大きな課題について、韓日の市民社会が何度も顔を合わせて、より積極的に議論する機会を設けることで、共同で問題を解決していくことを希望しながら、このセッションを終えたいと思います。ありがとうございました。